産後すぐは寝てた方がいいって聞いたことあるけど、ぽっこりしたお腹が気になるし、早く体を引き締めたい!!
って思う気持ち、女性ならきっとありますよね。産後すぐから激しいエクササイズなどはしてもいいものなのでしょうか?
実は、産後すぐはまだお腹の筋肉がちゃんと使えない状態なんです。お腹の筋肉がうまく使えない時って、動きの多いエクササイズしても、ちょっと効率が悪いんですよね。
なぜかと言うと、エクササイズに限らず、体を動かす時は最初にお腹の筋肉が働いてから、手足などが動くんです。なので産後すぐのお腹が使えない状態では、いくら頑張って体を動かしても、意味のあるエクササイズにならず結果にも繋がりにくくなってしまうんですよね。
では産後すぐからは何も出来ないの?と言うと、そうでもありません。この時期に合った方法でできることもあるので、気をつけた方がいいことと合わせてご紹介していきたいと思います。
- 早く産後の体を引き締めたい!と思っている
- 産褥期からできることが知りたい
- 産後に気をつけた方がいいことは何?
今の時期に合ったことをして、一生使う体を大切にしながらキレイを作りましょう!
目次
産褥期ってどんな状態?
産褥期というのは、徐々に体が妊娠前の状態に戻っていく時期のことを言います。
分娩終了後、妊娠および分娩によって生じた身体の変化が妊娠前の状態に回復するまでの期間を産褥期といい、その期間は通常、分娩後 6~8 週間とされている。
一般社団法人日本助産学会HPより(http://www.jyosan.jp/uploads/files/journal/josanyougo.pdf)
みなさんに実感できる部分としては、悪露が出たり、子宮が戻る痛み(後陣痛)などを感じることなどがあるかと思いますが、それ以外の目に見えない部分もたくさん変化が起こっています。
が、中でも、今回はエクササイズに関係のある部分を主に解説していきたいと思います。
⒈ お腹の筋肉の変化
妊娠中はお腹が大きくなりますよね。この時皮膚が伸びることで妊娠線なども出来たりしますが、皮膚の内側では、上の図のように筋肉も薄く長く伸びた状態になっています。
でも、赤ちゃん産んだのに、まだ妊娠5ヶ月くらいのお腹なんですけど…
中の赤ちゃんが大きくなるのに合わせて、腹筋自体も伸ばされてしまっていたので、産後は筋肉が伸びたり縮んだりということが苦手な状態になってしまっているんです。
腹筋群と骨盤底筋群は, 膨大する腹部の影響を強く受ける。腹筋群は分娩まで伸張され収縮の効率が低下する。
平元奈津子:妊婦に対する理学療法. 理学療法学 2014 ; 41(3), 165-169
筋肉はギュッと縮むことで力を発揮するんですけど、産後すぐの腹筋は縮むことがしにくくなっているので、ぽっこりした状態のままなんですよね。
産んだらすぐにお腹ぺたんこになると思っていたので、びっくりしました。
まずはゆっくりお腹の働きを取り戻していくといいと思いますよ。
⒉ 骨盤底筋群の変化
おしもの筋肉は妊娠中に大きくなった子宮や赤ちゃんを支えてくれていたので、出産の仕方に限らず伸ばされた状態になってるんですよ。
骨盤底筋群は増大した子宮を支持するため伸張されやすく, 骨盤底は2.5cm下がると報告されている。
平元奈津子:妊婦に対する理学療法. 理学療法学 2014 ; 41(3), 165-169
じゃあやっぱりおしもも筋肉が働きにくい状態になってるんですか?
そして、経膣分娩の方ですと、さらに出産の時に引き伸ばされているので、よりおしもの筋肉が働きにくい状態ですよね。
⒊ 重力に弱い状態
つまり、産褥期・産後すぐの時期は、筋肉自体がうまく働くことが出来ないような状態なので、座ったり立ったりなどでさえも、体にとっては重力の影響を受けやすい状態にあると言えます。
・そもそも産んだらすぐお腹は凹まない
・骨盤底筋群(おしもの筋肉)も妊娠中から影響を受けている
・産後の体は重力に弱い
産褥期の過ごし方4つのポイント
でも、実際ずっと寝ているわけにはいかないですよね。赤ちゃんのお世話もあるし、上のお子さんがいる場合は、なかなかずっと寝かせてはくれません。では、この時期はどんな風に過ごしていくといいんでしょうか?4つのポイントで解説していきたいと思います。
⒈ 生活リズムを整える
産後って、赤ちゃんの生活リズムがまだ全然定まらず、昼も夜もないような生活になりますよね。授乳やミルクにやたら時間がかかったり、上手に眠りにつけなくてグズグズしちゃったりして、ママもしっかり睡眠を取ることが出来ない日々がしばらく続きます。
産後はホルモンのバランスもですが、そういった生活の中で自律神経のバランスもなかなか整いにくい状態なんですよね。
筋肉がしっかり働いてもらうために、筋肉に栄養を送るのは血液です。でもその血液を筋肉に送る役割をしているのは、自律神経(交感神経・副交感神経)なんです。
筋交感神経は(中略)骨格筋内の血管平滑筋のほか, 骨格筋線維 (錘外筋と錘内筋) をも支配し, 骨格筋の張力や代謝の制御にも関与する.
間野忠明:筋交感神経活動からみた自律神経機能と病態. リハビリテーション医学 1996;33(6), 378-381
なので、自律神経のバランスが整わない中で筋トレに励んでも、なかなか思うようには進まないんじゃないかなという風にも考えられます。
この自律神経のバランスは、産後3ヶ月ほどで徐々に妊娠前の状態に戻っていくようです。
分娩前の迷走神経活動の減少と交感神経迷走神経のバランスの増加は、分娩後 3ヶ月で正常に戻ることがわかった。
Chen, G.Y., Kuo, C.D., Yang, M.J., Lo, H.M. & Tsai, Y.S.1999. Return of autonomic nervous activity after delivery: role of aortocaval compression. British Journal of Anaesthesia, 82(6), 932-934
それまでは、昼間に赤ちゃんと一緒に少しずつ睡眠を取るなどして無理をせず、少しずつ生活リズムを整えることから始めて、ダイナミックなエクササイズはリズムが整ってきたくらいから徐々に始めていくといいのではないかなと思います。
⒉ ゆるゆる腹帯でお腹をガード
これは以前に「ぽっこりお腹」に対しての記事にも書いたんですが、産後直後って本当にお腹の筋肉がだるだるで、寝返りして横向きになるだけでも、お腹のお肉が重力に負けてだら〜んって下に持って行かれてしまいます。実際これは心地のいいものではないですし、お腹の筋肉が戻るのを邪魔してしまうかなという印象だったので、腹帯での対策を考えてみました。
私の場合はサラシなんですが、妊娠中に使っていた腹帯でもいいかと思います。あまりキツく巻くと、おしもの方へ圧がかかってしまうので、寝返りをした時にお腹のお肉が横に流れない程度にゆるゆるに巻くのをオススメします。
詳しい巻き方はこちらからご覧ください。
⒊ 姿勢に気を使う
ただその数ヶ月の間、ずっと横になっているわけではないですよね。
上でも書きましたが、この期間はお腹の筋肉なども働かず、骨盤を支えているものも緩くなっている状況なので、重力に弱いとも言えます。
お腹が使えないことで、姿勢をきちんと保つことさえも難しいのですが、ソファにもたれて猫背で…という姿勢を取っていると、逆にしっかりと深い呼吸もできず、お腹やおしもの筋肉が働きにくくなってしまいます。
楽にいい姿勢を保てる座り方
産褥期〜産後に、タオルなどを使って簡単にいい姿勢を保てる方法(イス・床・ソファでの姿勢)をこちらでご紹介しているのでぜひ見てみてください。
授乳姿勢
授乳中はつい、赤ちゃんの方に自分の体を持っていきがちですが、上記を参考にまっすぐ座ってから、授乳クッションを使って、赤ちゃんを自分の胸の位置まで持ってきてあげると、体への負担も少なくなります。
⒋ 人の手を出来るだけ借りる
この時期にしっかり休むためには、出来るだけ自分一人で頑張ろうとしすぎないことも大切かもしれません。様々な理由から家族の協力が得られないで産褥期を過ごす方も多いと思いますが、その際にも家事代行サービスを時々使ってみたり、ネットスーパーを利用したりしながら、自分が休める時間を作るのも大事かと思います。
最近は産褥ヘルパーさんや、産後ドゥーラさんが活動している地域もあります。一度お近くにみえないか探してみてくださいね。
・生活リズムが整うまでは無理しない
・お腹の筋肉はゆるゆる腹帯で保護
・座る立つ時は、姿勢に気をつけることでお腹を働かせやすく
・産褥期は人の手を借りる
産褥期・産後すぐは「ながらエクササイズ」で
ちょっと気持ちや体に余裕があるときは、生活の中にエクササイズ要素を組み込んだ「ながらエクササイズ」で体を使っていくのもオススメです。
⒈ 授乳しながらエクササイズ
授乳時間が長い場合などは、その間にお腹を使うこともできます。
上記のようにきちんと座り、さらに背骨を引き離すように上に伸びあがります。
この時背中を反らないように注意しましょう。
背骨を引き離すように上に伸びあがることで、みぞおちから恥骨までの距離が長くなり、お腹の筋肉がぴんと張る感じがわかるかと思います。
この状態を数分保ちながら自然に呼吸をするだけでもお腹のエクササイズに繋がります。
でも、授乳中はゆったりした気持ちで赤ちゃんと向き合うことも大切だと思うので、毎回必死でやらないといけないものではないですよ。姿勢だけは注意をしながら、時々できる範囲で意識してみるといいかもしれません。
⒉ 抱っこしながらお腹を使う
抱っこで立っているときは、自然に腰を反らしてしまっている方が多い印象を受けます。
腰を反っていると、あまりお腹の力が使えていないので、この時も少しだけ意識して立つことで、お腹を使うことができます。
一度軽くヒザを曲げてから、ゆっくり天井に向かって引っ張られるようにヒザを伸ばして立っていきましょう。ゆっくり立っていくと、お腹に少しだけ力を入れながら立つ感覚がわかりやすいかなと思います。
この状態を持続するのはなかなか難しいのですが、「お腹を使いながら立つ」という意識を持つきっかけとして、練習してみるのもいいかもしれません。
こちらは動画でも確認できます。
⒊ 骨盤底筋を動かしてみよう
骨盤底筋群は、恥骨から尾てい骨まで骨盤の底を覆っている筋肉の集まりのことを言います。
骨盤底筋群を動かすのは、産後は特にとても難しいです。妊娠中に筋肉自体が伸びていることで動かしにくくなっているのもありますし、お産の影響で動かした感覚がわかりにくくなっている方もみえます。できれば妊娠中から練習をして、産後にもスムーズに動かせるようになっていた方が、いいかもしれません。
1mm動かすくらいの気持ちで
頑張って動かそうとしすぎて、お腹やお尻ばかりに力が入ってしまってる方がとても多いです。
ほんの1mm上に持ち上げてみるというくらいの気持ちで、少しずつ動かしてみましょう。
お腹やお尻に力が入らないように注意してみてください。
感覚がわからない時はタオルを使って
動かす感覚がわかりにくい方もみえます。ちょっと難しいなと感じたらタオルとイスを使ってみましょう。
①フェイスタオルを小さくまとめて、輪ゴムで止め、座面が硬めのイスに縦に置きます。
②タオルにまたがるように座り、猫背にならないように骨盤をしっかり立てておくのがポイントです。
そのままキュッと膣をおへその方に持ち上げるようにしてみます。タオルを通して、骨盤底筋群が動いている感覚がなんとなくわかればOKです。ただ、この時もお尻やお腹が動かないように注意してくださいね。
・授乳中や抱っこの時もちょっとだけお腹を意識
・骨盤底筋のエクササイズは、お腹やお尻が動かないように注意
産後はとにかく焦らない
産後すぐにできることを、少しだけご紹介しました。が、一番はとにかく焦らないことです。
姿勢がきちんと保てないうちから焦って激しいエクササイズすると、かえって腰が痛くなったり、
骨盤底筋群がちゃんと動かせないうちから重力の影響を受けやすいジョギングやジャンプなどをすると、尿もれに繋がったりという可能性も無きにしも非ず。
まずは、生活リズムを整えながら、睡眠と栄養をしっかりとって、体の準備をしておきましょう。
その間に、生活の中にうまくエクササイズ要素を取り入れながら今できることを今できる範囲内で行っていくことをお勧めします。